永久の別れ


これは60過ぎの親父と15年間連れ添った愛猫との回想録である。

コムギの異常に気が付いたのは2019年4月下旬であった。
上から見るといつもになくお腹がぷっくりと横に張っていたのである。
触っても特別嫌がる風でもなく、いつも通りにご飯も食べ走り回っている。

しかし、それから数日後ご飯の食べる量が激減したのである。
いつもの半分も食べていない。
これはいよいよおかしいと思い5月5日に近所の病院へ。
症状を告げるとエコー検査をしてみましょうと言うことになったので夕方まで預けることに。

夕方迎えに行くとお腹の毛がきれいに刈り取られていてなんとも哀れな姿になってしまっていた。
診断結果は肝臓が一つ委縮してしまってほぼ機能していないのと、血液が極端に薄くなり極度の貧血状態になっていること、お腹に腹水がたまっていることなどが告げられた。
これは癌などではなく内臓のどこかが炎症を起こしているためだと説明を受ける。
それ以上はわからないので、とりあえずステロイド剤を処方するので様子を見るように言われた。

ステロイド剤をチュールに混ぜて服用させること数日、食欲も戻りつつ動きも以前のように活発になってきたので一安心。
このまま良くなってくれよと言う思いで一週間後、再び病院へ向かった。

血液の濃度が改善されておりとりあえず危機は脱したようであった。
今日から増血剤も出しますと言うことだった。

容態が急変したのはそれから10日後のこであった。
ご飯もいっさい口にせず、ずっとリビングでうずくまったままであった。

よほどしんどいのであろうと思いその夜は私がリビングで添い寝をしてやった。
しかし、その夜コムギは眠った様子はなかった。

翌朝もうダメかもしれないと絶望感にひたっていると、なんと自力でトコトコと二階の私のベッド脇にある出窓まで登って行ったのだ。
そこはいつも日向ぼっこをするお気に入りの場所だった。
少しは良くなったのかなと思ったが、その顔を見ると髭は垂れ下がり一晩でものすごく老けた顔つきに変わってしまっていた。

私は胸騒ぎを覚えスマホで出窓に寝そべるコムギの写真を何枚か撮ってから「仕事行ってくるね」と鼻チュウをしてから後ろ髪引かれながら職場に向かった

それがコムギの生きている最後の姿であった。
夜、仕事から帰ると誰に看取られるでもなく一人寂しく逝ってしまっていた。
私は余りの悲しさに屍を抱きながら止めどもなく涙があふれ出た。

我が家に迎えてから15年の月日がたっていた。
悪さをして怒ったことも、笑い転げたことも、雷が怖いとしがみついてきたこともあった。
数え上げれば切りがない思い出の数々。

私の人生に充足と癒しを存分に与えてくれたコムギ、本当にありがとう。
安らかに。



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